下田 ‐ 建築史研究室

筑波大学 世界遺産専攻 下田一太研究室のブログです

立正大学仏教学部のインドネシア海外研修でのご案内

ボロブドゥールとプランバナン遺跡群を訪問された立正大学仏教学部の海外研修「南海の宗教と美術ツアー」でのご案内をしました。研修ツアーの団長は仏教美術を専門とされている安田治樹教授です。

ボロブドゥール寺院,パオン寺院,ムンドゥ寺院とロロ・ジョングラン寺院,セウ寺院,そしてプラオサン寺院を巡りました。

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仏教学を専門とされている方々約30名のツアーでしたため,ボロブドゥールの仏伝図等できるだけ寺院の浮彫物語や宗教的神格の配置について説明するよう努めました。

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訪問した各寺院の建立はほぼ同時期になりますが,異なる宗教を信仰したシャイレンドラ朝とマタラム朝の寺院が混在しています。仏教とヒンドゥー教は深く相互に乗り入れておりインドとは異なる独自の宗教観を呈しています。各宗教に対する寛容性は,現在に継承される旧王朝の国王と王妃とがイスラム教徒とキリスト教徒であったりする事例があるように現在のインドネシアにも継承されています。

主に,ボロブドゥールでは仏伝図を,ロロ・ジョングランではラーマヤナ物語について解説しましたが,これらをまとまって見学することで,それらの表現上の差異がより明瞭に見えるように思います。一般的に言われているようにボロブドゥールでは静謐な表現であるのに対して,ロロ・ジョングランでは動的でユニークな表現をとり,これら寺院が政治的統治装置としての民衆感化に対して果たした役割や姿勢の違いが感じられるようです。

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(ロロ・ジョングラン ラーマーヤナ物語:ラーマとラーバナの決戦図)

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(ボロブドゥール 釈尊の出城 この場面は第一回廊仏伝図の中でも最もダイナミックな構成です)

ツアーは今後カンボジアへ移動しますが,ジャワに残された寺院とクメールのそれらとを短期間にまとめて見学することで,両者の相違も浮き立って見られることでしょう。ジャワ建築とそこに表現された宗教美術は,インドから導入された教義に極めて忠実で,それらを丁寧に,また実直に表現することに努めたように思われます。祠堂の配置構成や神像の配置,浮彫の連続性等にそれらの特性はよく示されているでしょう。
一方,クメール建築はジャワ建築に比べて長い期間にわたって造営が続けられ,圧倒的に多数の建築が建立されたこともあってか,インドの宗教的原型から変則的な構成をとることが特徴のように思われます。これは参拝者に対して宗教的モチーフへの理解の幅を広くとる自由さを許容しているためかもしれませんが,あるいは私たちが知りうる教義からの変調がクメールでは大きいために,我々の理解がついていっていないに過ぎないのかもしれません。

美術史学によるアプローチは,建築史学よりもインドや中国,西アジアなどを含む広域の遺構や遺物を同一の視点で鳥瞰すべく学問水準の高さに達しています。なんとか,建築の空間構成,各部の形式,構造や工法といった視点からも同等の議論ができるよう研究を進展させなくてはならないと感じるばかりです。(下田)

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