下田 ‐ 建築史研究室

筑波大学 世界遺産専攻 下田一太研究室のブログです

カンボジア調査

久しぶりに一人でカンボジア調査に来ました。
一人で来るとなんて楽なんだろう・・・と感じつつ,一年で最も気候的に快適な12月という時期を活用して,外でも頭をフルに使える調査を。。。ということで仕事に没入。

シェムリアップでは,これまで懸案であったアンコール・トム周辺の未確認の変則地形を回りました。アンコール・トムと東バライの間の地区が主な調査地区,ということで出発地点は死者の門より。(そういえば,死者の門の象の鼻にサポートが。)

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雨期明け直後ですが,水はかなり引いており,ジャングルの中は比較的歩きやすい小道もあり,虫や鳥の声で騒がしい森の中をGPSを頼りにひたすら進む。
歩ける程度とはいうものの,全く見通しが効かない森では,航空測量で得られた地形図の精度を確認することは困難で,ようやく座標上の変則地形へたどり着いても,はたして地図上のどこにいるのか全く分からない状況。
数点の土器等を発見して,ここが居住区であった可能性の痕跡に小さな喜びを得る以上の成果はあげられず。。。


バイヨンでの修復工事は順調に進んでいるようです。新材の調達がままならず,アドミサイドでは困難が尽きないようですが,寺院東門と回廊では部材の仮組作業が進展し,まさに寺院の正面観がぐっと引き立ちます。
本設置にあたっては,基壇の変形を修正することが求められ,工事完成時点でのイメージは先行して得られますが,そこに至るの仕事は膨大でしょう。

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東参道の発掘調査はさらに難解な出土状況を極めており,複数の柱穴の調査に入っていますが,一つの穴に2本も3本もの木柱が立ち,少しずつ位置を調整していた様子が推察され,複数回に及ぶ増改築の過程を明らかにするのは一筋縄ではいかなそうです。

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さて,コンポン・トムはサンボー遺跡では,N1塔の南面の修復工事を進めています。南面階段側壁の工期が延びてしまったために,残りの作業を急ピッチで進めなくてはなりません。技術的にも難題である扉開口部の支保工の設置について検討を行い,工事に取り組んでいます。現在はプノンペンから資材の取り寄せをしていますが,今回の渡航中に一通りの設置を終えるのは難しそうです。

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また,基壇足元の煉瓦積みの安定化処置も同時に進めています。緩んでいる煉瓦積みの目地間へのグラウト作業が中心です。

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改修工事が終わったサイトの現場倉庫では,地階を観光客にオープンする遺物展示スペースにするために,展示遺物の設置作業を進めています。これまでの調査で発見して,ここに運び込んだ思い出深いオブジェクトの多くが日の目を見るということで楽しい仕事です。

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今回の中心となる調査は遺構目録を更新し,図面集の立面図の作成を進めることです。すでに基本的な遺構目録はできていますが,ここに建築的な記述を追加し,重要な遺物や古写真等の情報を追加しています。建築的な記述についてはどの程度詳細を加えるかが難しく,パルマンティエによる既往文献と重複しないように,そして新たに確認された重要な点をいかに追加するかという作業になります。
ここ数日の間に主要な祠堂を一通りめぐりましたが,こうしてじっくりと各祠堂を観察して回るのは久しぶりで,この涼しい天候もあってか,鮮明に建築が見え,新鮮な発見に満ちています。
と同時に,倒壊の危険に瀕している箇所が多いことも改めて実感され,これらをいかに補強し,修理するか,現状のペースでは到底追いつかない状況に絶望します。

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現在行っている修復工事を考えても,煉瓦造遺構で本格的な修理を行うと,たいへんな作業量となり,個別の遺構に対して長時間の工期が必要となってしまいます。こうした本格的な修理を地道に継続していくことに加えて,より効果的な仮説的支保の方法を考案することが必要です。
また,伸び続ける草木の除去も頭の痛い課題です。今年8月に実施した遺跡保存のワークショップの後に,カンボジア政府が草刈部隊を新たに立ち上げ,作業を開始したのは一歩前進ですが,遺跡の規模を考えるとさらに努力が求められます。
修復保存の事業規模をいかにして大きくしていくのか・・・作業のペースをあげるのか・・・悩ましいばかりです。

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