下田 ‐ 建築史研究室

筑波大学 世界遺産専攻 下田一太研究室のブログです

暴走ヘリ

サンボー・プレイ・クック遺跡群での発掘調査と同時並行で都城区内の航空写真の撮影も試みました。
リモコンヘリにカメラを取り付けて飛ばし、上空から都城区の写真を撮影し、土地の起伏や遺構の分布をより広域かつ鮮明に把握しようとするものです。

アンコール遺跡でのベン・トム貯水池調査に引き続き、大阪市立大学の原口先生と防災地質研究所の吉永さんに協力いただきました。

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暴走直前

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巨大なアブのような音を発して飛ぶヘリコプターに驚く地元の子供たち

今回はリモコンヘリがコントロール不能に陥るというトラブルがありましたが、複数回におよぶ飛行によってかなり広域での撮影ができました。
撮影された写真群から写真測量の技術によって三次元モデルを作成し,遺跡の分布と併せて地形や植生分布を把握します。

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上空からの写真

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作成された三次元モデル

今後は暴走するリモコンヘリを飼い慣らし,さらに調査エリアを拡張していきたいと考えています。

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サンボー・プレイ・クック遺跡での広域発掘調査

アンコール・トム内の貯水池ベン・トムでのコアリング調査に引き続き,サンボー・プレイ・クック遺跡群の都城区内における文化層の広がりを広域に把握するための発掘調査を行いました。

サンボー・プレイ・クック遺跡群では、19世紀末の遺跡群の再発見から数多くの考古学的発掘調査行われてきましたが、その大半は建造物や遺構が地表に数多く残されている寺院群区を対象にしたものでした。しかし古代の都市構造を解明するためには寺院群区だけではなく都城区内の調査が不可欠です。当時の都市内の建造物は多くが木造であったと考えられるため、埋没している遺構や遺物についての考古学的調査を今後さらに進めていかなければなりません。そのための予備調査として発掘調査を行いました。

今回の調査では、都城区内において300メートル間隔で約20地点にトレンチを設定し、土層の堆積状況を確認する予定でしたが,過酷な暑さと離れた調査地点を回っていく移動もあり,すべての計画地点を終了するには至りませんでした。それでも14地点で調査を終えることができました。

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トレンチ配置図
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遺物が確認された文化層および自然堆積の砂層の厚みはトレンチごとに異なっており、今後詳細な分析を行っていく予定です。また、粒度等の分析のためにすべてのトレンチで砂のサンプリングを行いました。

出土遺物は土器片をはじめ、レンガ、瓦、わずかな炭化物、および多数のラテライト片とノジュール等が出土しました。サンボー・プレイ・クック遺跡群におけるプレ・アンコール期の土器編年は確立されておらず、出土遺物の年代を推定することは現時点では困難ですが、今後、遺物の整理・報告および炭化物の年代測定などを行っていく予定です。

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コア・サンプリングの様子
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出土遺物
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コアの整理分析
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遺物の整理記録

今回の調査は炎天下での作業が多く体力的に厳しいものでしたが、カンボジアのおいしい食事や美しい自然に救われ、現地の方々の御協力もあり、充実した日々を送ることができました。調査の結果が、サンボー・プレイ・クック遺跡群における長期的な発掘調査計画や、適切な遺跡整備計画の策定に貢献することを期待します。

なお、今回の調査では終えることができなかった7地点については4月に追調査を予定しています。

(報告:菅澤 由希 M2)

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ベン・トムでのコアリング調査

3月16日から24日にかけて、アンコール遺跡では地質学的コアリング調査,サンボー・プレイ・クック遺跡群では考古学的発掘調査を行いました。

はじめの2日間で、コアリング調査を行いました。
水の底で長い時間をかけて堆積した堆積物の中には、古代の植生や動植物相を示す試料、たとえば花粉・プラントオパール・昆虫・微生物などの痕跡が多く残されています。また堆積物を用いた科学的年代分析の結果は、都市の利用年代の解明の手掛かりとなります。このような科学的分析は、古代の都市構造や人々の生活の様子を理解するうえで不可欠です。

今回の地質学的コアリング調査は都城アンコール・トムの南西隅に位置するBeng Thom貯水池(約200m×300m)の堆積物を対象に、大阪市立大学の原口強先生の指揮のもと行われました。

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発泡スチロールと金属のパイプで組んだいかだを池に浮かべて、その上で作業を行いました。人力で筒状のコアサンプラーを池の底に打ち込んだ後、回転させてから滑車を使って引き抜きくという方法をとりましたが、調査時は池の水深が90㎝ほどあり、行く手を阻む多数の水生植物や巨大なヒルと格闘しながらの調査となりました。

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採取されたコアは事務所でサブサンプリングを行い,日本に持ち帰られて科学分析にかけられています。
今回は、今まで調査がなされなかった池の深い部分の試料を新たに採取できたことが大きな成果となりました。今後、アンコール・トム内の他地点での花粉分析等との比較研究が行われ、アンコールの古環境復原研究に大いに役立つことが期待されます。

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(報告:菅澤 由希 M2)

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ミャンマー 〈ピュー遺跡〉 の調査

3月上旬にミャンマー中部に位置するピュー王国の古代都市「シュリクシェトラ遺跡」の調査を行いました。

ミャンマーは初めて訪れる国で,入国から新鮮な空気感に気持ちが高ぶっていましたが,ヤンゴンの近代建築とパガン大遺跡群を見学をして回った後り,専攻の修士学生のインターンシップの受け入れ先を依頼した機関をいくつか廻ったのち,ピュー王国の都の中でも最大級の遺跡群シュリクシェトラに入りました。

サンボー・プレイ・クック遺跡を研究している私にとって,この遺跡は同時代の城郭都市として重要な比較対象遺跡の一つで,いつの日か訪れたいと念願していたサイトでした。

最寄りのピイの町まではバガン遺跡よりローカルバスで向かいましたが,10時間以上の悪路を揺られ,久しぶりに過酷な旅路を体験しました。

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着の翌日からバイクに乗って遺跡群内の博物館の他,主要な遺構を回りました。今回は個人での予察調査でしたので,身軽なフットワークで回ることが身上です。

この古代都市は南北に4.4km,東西に3.8kmの卵型に環濠と周壁を巡らせており,12の城門より内外の出入りができる構造となっています。
今回の調査では三か所の門を回りましたが,漏斗状に内側に引き込まれた周壁構造をなす門は東南アジアの他地域の都市では見られない変わった構造です。今回は特に西側のLuln Kyaw Gateにおいて門の外側環濠を横断する発掘調査を見学することができ,環濠がかなり深くまで掘り込まれている様子が観察されました。
特に都城の西側は緩やかに登る勾配を有しているため,外敵からの防御の上では弱点となり,西側と南側には三重の環濠が巡らされています。

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周壁の外側には背の高いストゥーパが三基残されています。これらのストゥーパは極めてシンプルな形状で,インドあるいはスリランカから伝来した古式の形式を残していますが,その中でも肩が緩やかな女性的な形状と肩が張った男性的なものとがあり,煉瓦の塊の内部から周囲へと発する空気の重さが異なって感じられます。

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都城内外には複数の煉瓦造遺構が点在しており,最近の考古学的発掘調査によってその数はますます増えてきていますが,今回の調査ではおよそ20の遺構を回りました。いずれも崩壊が進んでおり,逞しい推測に基づく復元工事が施されているものもあります。
遺構の多くは建造年代が不確かで2世紀から9世紀の建立と,700年もの時代的な幅をもって推測されるにとどまっています。中にはバガン王朝時代に建立されたと推測される遺構も混在しており,その編年が求められるところです。使用されている煉瓦の中には胎土にもみ殻が混ざっており,こうした混入物の年代測定には興味がもたれるところです。

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都城中央には南北520m,東西340m程の煉瓦造の周壁に囲繞された王宮地区が残されています。この周壁や内部では発掘調査が行われ,今後の進展が期待されるところです。周壁内は深い藪に覆われており,自由に踏査ができませんが,煉瓦が複雑な起伏の上に散在しており,多数の遺構が崩壊して埋蔵している様子が窺えます。

都城周壁の南西には墓葬遺構が発見されており,多数の土器製骨壺が折り重なるように出土している様子が展示されています。都市の南西は死の方角であるという広く一般的な方位観がここにも通底していたのでしょうか。

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シュリクシェトラ内を回っていると,サンボー・プレイ・クック遺跡の都城の景色と重なりつつも,やはり植生や土壌,そして都城内に点在する村落の家屋や(もっとまじめに畑作に従事している)人々の雰囲気が随分と違うこと,そして強烈な日差しと熱さは共通していながらも,より乾燥した空気が他人行儀に頬に突き刺さってくるような気がしました。

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ピュー王国の城郭都市はミャンマー内に他にも複数残されています。順次それらを巡り,自分なりの関心を見つけていつかまた戻ってきたいと思います。

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