下田 ‐ 建築史研究室

筑波大学 世界遺産専攻 下田一太研究室のブログです

ボーリング孔から基壇内部調査

ボロブドゥールでのユネスコ調査ミッションは昨年に始まり4回目になりますが,今回は基壇内部の水分状態の測定が主な調査目的です。

2012年6月の最初の調査では,過去の修復工事記録の収集と現在進められている保存センターによる各種モニタリングデータの把握が目的でした。
2012年12月の2回目の調査では,トータルステーション等による測量機器を利用した基準点の計測やノンプリズム型の測量での挙動観測方法の提案を行いました。またフィルターレイヤーと呼ばれる基壇内部の透水性の膜をCCDカメラで観察することも目的としました。
2013年8月の調査では,測量機器による挙動観測の見直し方法について包括的な調査を行い,改善方法の提案を行いました。また,長期設置型のGPSや傾斜計を遺構各所に取り付けて,精度の高い局所的な挙動観測を開始しました。さらに雨量計や温湿度計を各所にとりつけ,また降雨時の排水量計測の観測機器を設置しました。

こうした経過を経て,今回4回目の調査となりましたが,基壇内部の状態を解明しようという今回の調査は極めて困難な課題です。石積みと過去の修復時のRC補強構造が内部には埋設されており,この内側はブラックボックスのような状況となっています。

このブラックボックスの内側を観察するための,かすかな希望が,いくつか残された小さなのぞき穴です。つまり,過去の修復時に穿孔したボーリングの孔があるのです。
現在は12本の孔が観測用に残されており,保存センターの専門家もこれらの孔を利用して地下水位の観測やボーリング孔の傾斜観測を行っています。
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これまでのそうした保存センターによる観測結果をふまえて,今回はケーシングの外側,つまり基壇内部の状況を探ることを目的としました。というのも,ケーシング内の水位観測からは季節変動が明瞭ではなく,基壇内部の水分挙動が捉えられていない可能性が高いためです。
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(保存センターによって行われている地下水位と傾斜観測)


今回の調査では,放射性同位体元素から放出する放射線と,石や土中の物質を構成する原子との相互作用を利用して,基壇内部の密度と水分量を計測する機器を使用します。

密度はガンマ線を利用し,水分量は中性子を利用します。
プローブをケーシングの中に下ろし,10cmもしくは20cm毎の深さで計測を行っていきました。
今後,各種校正が必要となりますが,興味深い結果が得られつつあります。
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今回は雨季真っただ中にて,毎日午後になると滝のような雨に打たれ,なかなか観測がはかどりません。
加えて,プローブが孔内で詰まって抜けなくなったりと,試練の多い修行のような調査となりました。
ボロブドゥールの内に秘めた静かなる精神世界を覗き見るのは容易ではないようです。。。
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ボロブドゥール ドイツ政府支援パンフレット

ドイツ政府の支援によって進められているボロブドゥール遺跡におけるユネスコの保存事業を紹介するパンフレットが刊行されました。
ボロブドゥール遺跡周辺の施設の他,インドネシア国内で配布されています。

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パンフレット ダウンロードページ

遺跡公園内の博物館ではドイツ政府による東南アジア各国での文化財支援に関する事業を紹介する展示が行われています。インドネシア,タイ,カンボジア,ラオス,ベトナム等の国での遺跡修復や文化財記録の事業が10件紹介されていますが,そのうち3件の事業は現在ボロブドゥールでのユネスコによる修復事業の代表をされているハンス・ライセン教授が率いる事業となっており,活動の幅広さを感じます。
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また,アンコール遺跡でのGerman APSARA Conservation Projectについても紹介されていました。
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ボロブドゥールでは本日17日に国際10kmマラソンが開催され,早朝より大勢の出走者が集まりました。外国人の姿はほとんど見かけませんでしたが。。
10年前までは毎年行われていたこのマラソン大会ですが,久しぶりの再開とのこと。
アンコール遺跡でもここ10年にわたり国際ハーフマラソンが開催され,毎年参加者が増え続けています。ここボロブドゥールでも今後少しずつ海外からの参加者が増えていくでしょうか。
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ゴール地点には特設会場が設けられて表彰式などが行われましたが,その後は遺跡のすぐ脇で地面が揺れるような大音響でコンサートが開かれました。
これがために寺院が壊れるのではないかと思うほどの音量でしたが。。。
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ボロブドゥール専門家会議

インドネシアMagelangにて第6回ボロブドゥール専門家会議が開催されました。海外からはドイツ,日本,ネパールからの参加がありましたが,本学世界遺産専攻からは松井先生と下田が参加し,それぞれ石材保存と寺院の構造について,これまでの研究結果をふまえて報告をしました。
また,現在博士課程に在籍しているユネスコジャカルタオフィスの長岡さんからは,周辺地域の住民参加や教育プログラムについて報告がありました。

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正味3日間におよぶ会議では多岐にわたるテーマについて議論されましたが,下田はガジャマジャ大学のDjoko教授と二人で2時間というセッションとなり,ボロブドゥール寺院の構造の安定性についてかなり詳細な報告と議論ができたと思います。
表層に表れている石積みの劣化問題とは異なり,基壇内部の構造に起因した挙動や地下水といった目に見えない箇所における問題となるため,1970~80年代の修復工事の際のボーリング調査の結果や,近年の挙動観測など限られたデータをもとに推察を重ねることが求められる比較的難しい課題でありましたが,遺跡の物質的な保存を考える上ではたいへん重要な問題です。

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今回の会議では過去の修復工事で中心的な現場監督をされていたメンバーが多く参加され,報告書の上でしか見たことのない方々にお会いすることができたのが大きな収穫の一つでした。
また,2005年ごろまでボロブドゥールセンターのコアメンバーであった方々とお話しできたのも楽しい時間となりました。20年にわたり挙動観測の測量をしていた方々の苦労話はなかなかの重みのある,そしてしみじみとしたお話でした。

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会議の後には1週間ほどボロブドゥールでの調査を行う予定です。

ユネスコ‐ジャカルタオフィスの報告

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