下田 ‐ 建築史研究室

筑波大学 世界遺産専攻 下田一太研究室のブログです

つくばサイエンスウィーク

10月28日より30日にかけて,TSUKUBA Global Science Weekが開催されました。
https://www.tsukuba.ac.jp/event/e201407071450.html

世界遺産専攻では,『ミャンマーにおける世界文化遺産への取り組みと研究・遺跡保存・マネジメントの課題 ~ピュー遺跡群とバガン遺跡群を対象として~』と題するセッションを企画し,今年世界遺産となったミャンマーのピュー遺跡群,そして現在,新たな世界遺産申請に取り組まれているバガン遺跡の動向について報告・討議しました。

ミャンマーにて実際にピュー遺跡の世界遺産申請の中心人物として携わり,現在も若手の考古学・文化財保存を指導する考古学校の校長を務めるU Win Kyiang氏と,バガン遺跡の世界遺産申請においてユネスコのコーディネーターとしてやはり中心人物として仕事を進められているKai Weise氏の両名をお招きし,ご講演をいただきました。
また,下田からは東南アジアにおける建築遺産での近年の取り組みについて,主にボロブドゥール,スコータイ,アンコール,ミソン,ワット・プー遺跡を紹介し,ミャンマーでのこれからの活動へ活かされるべき課題について報告しました。

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「Challenges for the Future at the WorldHeritage Inscribed Site, Pyu Ancient Cities」ウー・ウィン・キアン(Field school of Archaeology, Dept. of Archaeology and NationalMuseum, Myanmar)

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「Issues on the Safeguarding of Bagan Monuments」カイ・ワイゼ(UNESCOアドバイザー)

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「Future Conservation of the Architectural Heritages in Myanmar through the experiences in the Southeast Asia」下田一太

①バガン遺跡がどのようなOUVをもって世界遺産申請を進めていく予定なのか,②どのような保全体制を築いていくのか,③若手の専門家育成をどのように進めていくのか,④海外からの専門家や経済的支援はどのような活動に対して求められているのか,⑤近年の大胆な遺構の再構築にはどう対処するのか,⑥景観的価値はどこにあるのか,⑦すでに遺跡群内での移住が行われた村民と遺跡との関係をどのように考えるのか,等々,様々な視点から最新の状況をふまえた報告をいただきました。
来週にはミャンマーにおいてバガン遺跡の世界遺産申請における基本計画を策定する会議が予定されており,今後の進展がさらに注目されるところです。

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文化財科学会 in 奈良 プラス

7月4日より6日にかけて奈良教育大学で開催された文化財科学会大会に研究室生とともに出席しました。
大会では,サンボー・プレイ・クック遺跡における年代測定や発掘調査における土層分析の結果を紹介した他,内田悦生教授のプレア・ヴィヘア寺院の伽藍内の各遺構の編年分析について連名発表を行いました。

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大会前日にはエクスカーションとして古代水田跡地の発掘調査現場を見学に参加しましたが,畦畔の微妙な土色や土質の違いを見定める精緻な発掘調査に感嘆しました。

前の週にも登呂遺跡にて水田跡地についての膨大な研究成果について見学する機会があり,何層にも重なる畦畔を検出していく仕事については,展示物のみからは信じがたいものがありましたが,実際の現場を見てその根気強く精緻な土層観察の賜物と納得しました。

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また,学会会場から近くの頭塔と元興寺に,元興寺文化財研究所の佐藤さんのご案内の元見学に行きました。頭塔はインドネシアのボロブドゥールとの関係性も想起されるような独特な形式の仏塔で,8世紀にしてみれば最新の仏教建築の様式にあったものかもしれず,当時の東南アジア-東アジアの国際交流等にも思いを巡らせる興味深いサイトです。

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元興寺は往時の大伽藍の面影を残すべく極楽坊を詳細な説明のもと見学させていただきました。また宝物殿に保管・展示されている国宝五重小塔は,古代的な建築形式を残す貴重な遺品で,各重の軒が軽やかに延びている様子が印象的です。今年中には東京国立博物館での展示のために解体作業も予定されているとのことで,再び解体中,そして東京でも再び拝見できればと思っています。

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イコモス 石と土の建造物保存

5月20日から23日にかけて,韓国の公州にてICOMOS-ISCS (International Conference on Conservation of Stone and Earthen Architectural Heritage)が開催されました。

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石と土による歴史的建造物の保存を専門とする多くの研究者が公州大学の会場にて各々の研究成果や修理事業について口頭・ポスター発表し,意見交換が行われました。
下田はアンコール遺跡バイヨン寺院の中央塔の安定化に関する問題として,中央テラスの内部構造について,過去4年間にわたる日本政府の研究事業にもとづく建築・考古・地盤工学による調査結果を報告しました。4日間にわたる会議と百済の石造物を主に対象としたエクスカーションなど,大変充実した内容でした。

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エクスカーションでは石造物の専門家が多いことにちなんだサイトが多く,宋山里古墳,公州国立博物館,瑞山磨崖三尊仏,扶余定林寺,扶余国立博物館,無量寺,他を見学して回りました。多くは百済文化の重要な痕跡として残されたもので,日本への仏教文化の伝播を考える上で重要なサイトをまとまって勉強するまたとない機会に恵まれました。

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ボロブドゥール専門家会議

インドネシアMagelangにて第6回ボロブドゥール専門家会議が開催されました。海外からはドイツ,日本,ネパールからの参加がありましたが,本学世界遺産専攻からは松井先生と下田が参加し,それぞれ石材保存と寺院の構造について,これまでの研究結果をふまえて報告をしました。
また,現在博士課程に在籍しているユネスコジャカルタオフィスの長岡さんからは,周辺地域の住民参加や教育プログラムについて報告がありました。

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正味3日間におよぶ会議では多岐にわたるテーマについて議論されましたが,下田はガジャマジャ大学のDjoko教授と二人で2時間というセッションとなり,ボロブドゥール寺院の構造の安定性についてかなり詳細な報告と議論ができたと思います。
表層に表れている石積みの劣化問題とは異なり,基壇内部の構造に起因した挙動や地下水といった目に見えない箇所における問題となるため,1970~80年代の修復工事の際のボーリング調査の結果や,近年の挙動観測など限られたデータをもとに推察を重ねることが求められる比較的難しい課題でありましたが,遺跡の物質的な保存を考える上ではたいへん重要な問題です。

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今回の会議では過去の修復工事で中心的な現場監督をされていたメンバーが多く参加され,報告書の上でしか見たことのない方々にお会いすることができたのが大きな収穫の一つでした。
また,2005年ごろまでボロブドゥールセンターのコアメンバーであった方々とお話しできたのも楽しい時間となりました。20年にわたり挙動観測の測量をしていた方々の苦労話はなかなかの重みのある,そしてしみじみとしたお話でした。

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会議の後には1週間ほどボロブドゥールでの調査を行う予定です。

ユネスコ‐ジャカルタオフィスの報告

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国際地盤工学会

9月2日より6日にかけてパリの国際会議場にて第18回国際地盤工学会が開催されました。4年に一度の学会で,今回は世界各国より1000名以上が参加,日本からは150名ほどが出席しています。
第18回国際地盤工学会ウェブサイト
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学会の分科会に「遺産のための地盤工学(TC301)」と「アジア地区の遺産のための地盤工学(ATC19)」が設けられており,多様な研究事例が報告されました。
遺産の保存修復においては,地面上部に残された建物を対象として建築学からのアプローチが一般的ではありますが,これを支える基礎にも重要な遺跡の歴史的・技術的オーセンティシティーがあることが強く主張される各発表です。遺跡周辺の環境を考える上でも,遺構から連続的に周囲に広がる地盤はたいへん重要な要素となっています。

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発表者に対してセッションの時間が限られていることもあり,この学会内では十分な議論ができないため,後日9月6日にはATC19のメンバーにてユネスコ本部内にて会議が開かれました。ATC19の代表はアンコール遺跡,ボロブドゥール遺跡でもお世話になっている岩崎良規先生です。

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朝9時から夕方6時までにわたり,世界各地の遺産にまつわる地盤工学による研究事例が報告・議論されました。
地盤工学による単一アプローチとはいうものの,学問分野内のさらに多様な専門性にもとづく学際的な議論が展開されたのが印象的です。こうした地盤工学に立脚した遺跡保存の視点が今後ますます重要性を高めていくことを感じる多様な議論でした。(下田)

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