下田 ‐ 建築史研究室

筑波大学 世界遺産専攻 下田一太研究室のブログです

煉瓦積みの中に確認された砂岩板による補強

サンボープレイクック遺跡群の北寺院主祠堂の修復工事を進めています。
7世紀に建立されたと考えられている煉瓦造の遺構で,数年前から修復を続けていますが,今年度末の完成を目指して急ピッチでの作業です。

IMG_3555.jpg

写真の足場上方にブルーシートをかけた作業場では,建物上面で緩んでいる煉瓦層を部分的に解体し,それらを再設置して強化する処置が進められていますが,この作業において,砂岩板が補強のために挟み込まれていることが確認されました。

こうした砂岩板が挟み込まれている例は,クメール建築の煉瓦造遺構では他にも例があり,このサンボープレイクック遺跡群でも大型の祠堂では認められますし,アンコール遺跡群でもロリュオスのプレア・コー寺院などで見られます。
ただ,この祠堂で特徴的だったのは,外壁に対して斜めに砂岩板を配置していたという点です。
たしかに,同じ大きさの砂岩板を建物の隅部に設置するのであれば,この方が有利であろうと想像できますが,こうした設置の仕方に当時の工人たちはなんとなく気持ち悪さを感じなかったのかと,疑問に思ったりもします。

IMG_3569.jpg

その他にも,今回の修復工事では建物上部の煉瓦積みの中に,見えない小スペースを扉開口部の上方に設けて,空隙をとって荷重を分散させる仕組みが発見されるなど,工事をしてみて初めて分かった事実も少なくありません。
面白いものです。

IMG_3578.jpg


この祠堂が立つテラスの周辺では発掘調査を進めており,できれば今年末までには四周全ての堆積土砂のクリアランスを終えたいと考えていますが,果たして間に合うかどうか。。。作業を効率化するための方法を検討しています。

修復工事とテラスの整備が終われば,この寺院の中心エリアが見違えるようになるだろう!と期待しています。
今年度が最後になる科研調査の最後に,遺跡へのお返しをこうした形でできればと思っています。

スポンサーサイト



PageTop

サンボープレイクック遺跡群での人材育成事業

サンボー・プレイ・クック遺跡群では国際交流基金からの支援をいただき,本年度から人材育成事業を開始しました。
第一回目のプログラムを8月後半の2週間にて実施しました。
研修の内容について,こちらのサイトに紹介をしましたので,ぜひご覧になってください。

研修を通じて,カンボジアの学生の能力の高さを改めて実感しました。先月は日本からの学生を引率し,カンボジア人大学生と協同で学びの場を設けましたが,その際にも日本とカンボジアの学生とでは異なる方向で能力が発揮されていることを強く感じました。
グループで物事に取り組むときの連携の取り方や,成果を短時間でうまく表現して発表できる点,それから数日の徹夜などは厭わない点など,カンボジアの学生は優秀であるように思います。
ただ,参加した学生の専門が違いましたので,そうした専門的なバックグラウンドの差が出ているのかもしれません。
現場での教育プログラムは楽しいものです。。

PageTop

イーシャナプラの都城中央マウンド調査(2)

2月末から3月にかけて,サンボー・プレイ・クック遺跡群の都城地区の中央に位置するM90と番付されたマウンドにおいて発掘調査を行いました。このマウンドは,南北に約80m,東西に30m,高さ約3mと,都城内ではひときわ大きな規模を有するもので,重要な施設であったことがうかがわれます。
約2週間の調査を無事に終えました。

01_M90 aerial

03_.jpg


マウンド内にはラテライトと煉瓦よりなる遺構が良好な状態で残されていることが確認されました。マウンドの規模に対して,調査ができた範囲は限られてるため,その全体像は定かではありませんが,高さ2m程のラテライトの擁壁に囲まれた南北に長い方形遺構がまずあり,一度この遺構が放棄された後に,この上面に新たに煉瓦遺構,あるいは煉瓦を基礎とした木造遺構が造られたようです。

遺構の基礎内部や周辺からは多数の土器が出土し,多くはプレ・アンコール期の特徴を良く示すものであったため,この遺跡群の最盛期とされる7世紀の利用の痕跡が認められたものと考えられます。

カンボジアの3,4月は大変な暑さでしたが,約25名の住民参加とプノンペンからの大学生,そして日本人学生等も含めた約35名で充実した成果があげられたと思います。

39.jpg

DSCF7022.jpg

drink.jpg

遺構の全容解明のために,今後のさらなる調査を予定しています。

PageTop

イーシャナプラの都城中央マウンド調査(1)

サンボー・プレイ・クック遺跡群の都城内にて発掘調査を開始しました。
都城中央に位置するマウンドで,南北に70m,東西に25m,高さ約3mの規模でこの地域では最も大きなマウンドです。
ラテライトや煉瓦が散乱しており,一部には地上に遺構が露出しています。
これから2週間ほどにわたって調査を継続する予定ですので,追っての続報を期待してください。。。

DSCF5672.jpg

DSCF5697_68-69_J-N.jpg

PageTop

サンボー・プレイ・クック遺跡群のレセプションセンター オープン!

このたび,サンボー・プレイ・クック遺跡群のレセプションセンターの竣工式が執り行われ,施設の利用が一部で開始されました。

141127_03.jpg

141127_02.jpg

141127_01.jpg

レセプションセンターは,遺跡群の管理事務所,チケット販売,レストラン,地域物産品の実演販売可能なマーケットなどの施設を含むもので,遺跡へアクセスする道路舗装整備と駐車場が工事併せてアジア開発銀行のプロジェクトとして行われました。

サンボー・プレイ・クック遺跡群保全事業では,この舗装道路のルート設定や,レセプションセンターの建設予定地の検討,候補地での事前発掘調査,そして施設のデザインに協力をしてきました。

141127_04.jpg


レストランとマーケットの利用が開始され,これまで遺跡群の寺院境内に位置していたレストランが新しい施設に移動して多くの国内外の観光客を受け入れています。
マーケットについてはできるだけ地域物産品の販売を目指すことになっており,周辺の7カ村がそれぞれ特徴的な物品を検討しますが,現実的に隣接する村落で特徴のある商品の開発は今後の大きな課題です。

141127_06.jpg

141127_07.jpg

141127_05.jpg


管理事務所やチケット販売については,遺跡群の管理体制の整備とあわせて具体的な組織化に取り組まれる予定です。現在準備が進められている,この遺跡群の世界遺産登録申請においてもマネジメントプランの充実が求められていますが,管理組織構築の主導権争いが静かに生じており,難しい現状があります。

これまでにも遺跡群を管理してきた文化芸術省が,積極的に管理計画を準備してきましたが,すでにカンボジア国内で世界遺産に登録されたアンコール遺跡群やプレア・ヴィヘア寺院と同様に,その上位の行政組織が独立した機構を立ち上げることを検討しています。その他,様々な思惑が絡み,たいへん複雑な状況となっている現状です。
管理事務所のオープンは,これらの問題解決を象徴的に示してくれることでしょう。

PageTop